ベトナムの美術
新石器時代に属するホアビン遺跡などの洞窟に最古の彫刻が発見されているが,史的年代を推定できる古代美術は文郎・欧貉時代のドンソン遺跡などの青銅器にみられる彫刻で,その文様の特徴は北属期の7世紀までの中国式墳墓に発見される青銅製装飾器に引き継がれています。
中国から独立後は報天寺の報天塔,タンロン(昇竜)の一柱寺などの独特の石造建築や,バクニン(北寧)の瓊林寺の千仏像に代表される仏教美術が開花し,陶芸にも民族美術の創造がみられています。
リ(李)朝期の遺物はわずかしか伝わらないが,仏教の装飾台座や黄釉磁器の竜や蓮弁の文様に特徴があります。
チャン(陳)朝からレ(黎)朝中期にかけて美術はたくましさと簡素さを均衡美の中に追究し,石造建築ではそれがタインホア(清化)のホー(胡)氏の堡塁に示されています。
黄釉や緑釉に加えて白磁,青磁が発達した陶磁器は,一時中国陶磁の模倣に堕したが,チャン朝後期に鉄絵が興り,レ朝の青花(せいか)(染付),五彩磁などの絵付陶磁を導いたようです。
レ朝が残した仏教美術の作品は,筆塔寺の千手観音や西方寺の阿羅漢像が著名でありますが,村落の亭(集会所)の木板彫刻に象徴される,軽妙で質朴な新興の民間美術が,寺院の建築にも影響を与えました。
19世紀以降はグエン朝の保守的な文化政策とフランスの植民地統治のもとで,伝統美術の発展は大きく阻害されました。
しかし植民地期後半には西洋美術の移入によって絹地の淡彩や漆絵が新境地を開き,旧正月の縁起物として伝えられた泥絵を一例として,その間農村地域で継承された民間の伝統芸術は,独立後にとりわけ尊重されて今日に及んでいます。
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